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あなたは時々、わたくしに赤い顔をおさせなさいますわ [読んだ本 / 好きな文章]


人情武士道 (新潮文庫)

人情武士道 (新潮文庫)

  • 作者: 山本 周五郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1989/12
  • メディア: 文庫

『青べか物語』において、その巧みな人物描写にいたく感銘を受けた(過去ログ宣伝厨)山本周五郎先生の短篇集。読むのに数ヶ月かかったよ。内容が難しいわけでもないしボリュームがあるわけでもない。暇なときに読もうとしていたけど、その「暇なとき」をスマホの野郎がどんどん吸い取っていき、読書なんていう娯楽はどこかへ消えちまったのさ。ほんま、あいつは現代の時間泥棒やで…。

ともあれ、タイトルから想像される通り、12編あるうち10話が江戸時代のお侍や町人、職人らが主人公の時代物。そのほとんどが多かれ少なかれ人生の悲哀を感じさせるもので、そこにチャンバラのアクションシーンが盛り込まれているものも結構あって、なかなか面白かったです。

いまパラパラめくってみると、「大将首」っていう話がいちばん好きかも。長年うだつが上がらず奥さんに迷惑をかけっぱなし、でも腕は一流という下っ端侍が、手違いで藩の上官と斬り合いになってしまい…という筋で、夫婦の絆にホロリ&結末がちょうスカッとする。これに限らず、全話に通俗的なB級テイストがプンプンしていて、まさに娯楽ものやね。

この本は、いろんな雑誌に読み切りとして書かれた作品を集めたものらしいんだけど、そのどれもが古くていちいちビビった。各話の最後に初掲もととして(「キング」昭和八年二月号)とか、(「講談倶楽部」昭和十四年十月号)とか載ってる。もちろん昭和だろうとは思っていたものの、まさか戦前とは。

でも、いままで社会の史料集経由で単なる知識としてしか知らなかったあの有名な『キング』がグッと身近に感じられて、ああ、その誌面に印刷されていたこういうお話を戦前の人たちはエンターテインメントとして楽しんでいたのだなあという実感、いわば「臭い」がひしひしと伝わってきた。その生々しい臭覚がいちばんの収穫ッス(ダジャレ)。あとがきを読むと、そういう大衆的な雑誌に書くことにシューゴロー自身は複雑な思いをいだいていたようで、『青べか物語』のことも考えると、その点もなかなかに感慨深いものであるッス。
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